読書とカフェの日々

読書感想文と日記

千葉ルー(読書記録)

済東鉄腸の「千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話」を読んだ(2023年10月30日読了)。

まず、タイトルがすごいでしょ。そして表紙のイラスト(装画:横山裕一さん)も素敵。岸本佐知子も推薦しているのでこれは読むっきゃない。装丁の色彩の中で佐知子の名前だけが、鮮やかに脳裏のスクリーンに焼きついた。ちょうどこの頃から、私の中で岸本佐知子フェアが始まっていたんだけど、それはまた別の話で、まだ終わっていない話。

結論から言うと、タイトル真実《マジ》。実際に著者が経験した出来事がまんまタイトルになってるエッセイで、熱量が半端ない。鉄腸さんは本当に史上最強のひきこもりだよ。

四年間の暗黒の大学生活の締めくくりとして就活に失敗して引きこもり。汚らしく間延びした時間の中で受動的に観られる映画で心が癒されていき、映画批評を書き始める。そうするうちに日本の映画批評に不満を覚え、むしろネット上の「映画痴れ者」たちにシンパシーを感じ、日本未公開映画の批評を始めていく。その舞台はもちろんはてなブログの〈鉄腸野郎Z-SQUAD!!!!!〉。その中で人生を変える一本のルーマニア映画に出会って…

ここからのスピード感がすごいから是非みんなに読んで欲しい。元々が言語オタクとはいえ、ルーマニア語なんてどうやって習得したのか。その発想力、行動力がマジですごすぎる。いま己にできることに真正面から過激に徹底的に向き合い、奇跡のように美しい出会いや経験が鉄腸さんに降り注ぐさまは感動的で、興奮と歓喜と涙なくしては読めないほどだった。没頭すると瞬きを忘れるドライアイの者なので。佐知子とも相思相愛でうらやましいったらない。こんなふうに本気を見せつけられて、元気をもらえるし、私も真正面から本気を出せるかなって鼓舞されて、がむしゃらに夕陽に向かって走りたくなる(走行距離は50mとする)、そんな気持ちになった。何かをやりたくて、その方法は多分わかっているけど、動き出せない私たちみんなの心にこの本が届きますように!