読書とカフェの日々

読書感想文と日記

5月22日:テリー・ビッスン「熊が火を発見する」

じゃーん。話題のSFマガジンを購入した。

宇多田ヒカル小川哲の対談で話題のSFマガジン2024年6月号。売れてるなあと思ってみていたんだけど、丁度読みたかったものも収録されていたので遅ればせながら購入した。

円城塔田辺青蛙による「読書で離婚を考えた。」はお互いに相手に読ませたい本を指定し、指定された課題図書についてのエッセイを書くという往復書簡的ウェブ連載の書籍化(著者らは夫婦)。第2回目に円城塔が指定したのが「熊が火を発見する」で、タイトルのインパクトからずっと読みたいと思っていた短編だった。

ちなみに、第1回で田辺青蛙が指定した課題図書は吉村昭羆嵐。こちらも読みたい。噂の見てきたように書く文体も気になる。道産子としては直木賞に輝いた河﨑秋子「ともぐい」も読みたいなあ。熊三昧。今北海道では第2のOSO18になりそうな逸材熊が頭角を表しつつあり、高まる熊熱なのだ。

ところでこの「熊が火を発見する」、「読書で離婚を考えた。」では「ふたりジャネット」所収となっていて、もちろんそちらをあたろうとアマゾンなどを見ていたのですが、まぁないのよね。古本になります。Kindle化もしていないし。どうしましょうって思っていたところに、追悼企画でSFマガジンに再録されていることがわかり、手に入れました。Netflixの「三体」公開記念特集も入っていて私得な号でした。

おどろいたことにここアメリカ南部では、熊たちが冬ごもりをやめはじめたー三冠に輝いた代表作

【あらすじ・作品紹介】
主人公は州間高速道を走行中に車のタイヤがパンクして分離帯の草むらに乗り上げてタイヤ交換をはじめる。もう夜であたりは暗く、同乗していた甥っ子に懐中電灯を持たせて作業をするが電池が切れかけでいかにも頼りなくついたり消えたりする。ふいに明るい光があたりにあふれて振り向くと、二頭の熊が木立で松明をかがげていた。手早く作業を終えて車に乗り込み、走り去る。「どうも熊が火を発見したみたいだな」。TVは連日熊の話題でもちきりだ。熊たちはミシガンとカナダの森から高速道伝いに南下してきており、分離帯で冬を過ごすつもりらしい。ある夜、主人公の母親がホームから抜けだし行方不明となってしまう。探しに出かけた主人公と甥っ子は焚き火を囲む熊たちの中に母を発見する。母に促されて丸太の上に腰掛けて座に加わる主人公と甥っ子。三人は熊と共に火を囲み、静かで幸福な一夜を明かす。

熊が巧みに火を扱うような非現実感と、主人公らの日常生活とが並列的に描かれているおかしみに味がある。もの言わぬ熊たちと車座になってじっと火を見つめる。それぞれの孤独をそのままにして、寄り添う思いやりに満ちた距離感が心地いい。

本誌の追悼特集では新たに訳出された短編が2作収録されているので明日にでも読んでみよう。SFマガジンひさびさに買ったので、知らない作家さんの読み切りなど読むのも楽しみだ。